1.導入
みなさま、おはようございます。10月も後半に入り、だんだんと秋が深まってきたように思います。第二コリントの手紙の内容も非常に深く、濃くなってきます。今日は比較的長い箇所をお読みいただきましたが、一読されて、ずいぶん難しいことを書いているなあ、と思われたかもしれません。パウロが何を言いたいのか、にわかには分からないかもしれません。いきなりモーセが出てくるのはどうしてなのか、と思われるでしょう。ですので、まず今日の箇所の内容を大づかみで捉えてみましょう。今日の箇所の入り口のところ、3章の冒頭には、「推薦状」の話題が出てきました。前回の説教でお話ししたように、古代社会においては、推薦状というのはとても大事で、特に身分の高い人に会うためには推薦状は不可欠でした。では第二コリントのこの箇所で、どうしてパウロが推薦状の話を持ち出したかといえば、そこにはある特別な事情がありました。パウロがコリント教会を開拓伝道してから離れた何年か後で、当時は無牧の状態になっていたコリント教会にやってきたユダヤ人の宣教団は、推薦状を携えてやってきました。自分たちが信頼できる教師であることを証明する推薦状です。おそらく彼らは当時のキリスト教の総本山であるエルサレム教会からの推薦状を持ってきたものと思われます。エルサレム教会は、12使徒であるペテロやヨハネ、主イエスの弟であるヤコブなど、錚々たる面々の率いる教会です。その教会からの推薦状は、一番格が高いといいますか、権威があったことでしょう。そしてエルサレム教会が権威を持っていたのは、それが聖地エルサレムに所在していたことが大きな要因であったことは間違いありません。エルサレムはキリスト教の母体であるユダヤ教の聖地です。主イエスも、エルサレムを聖地として重んじていました。さて、エルサレム教会からの推薦状を持ってきた宣教団の人々は、パウロも推薦状を持ってコリント教会にやって来たのか、とコリント教会の人々に尋ねたものと思われます。パウロも、私たちのようにエルサレム教会からのお墨付きがあるのか、と聞いたわけです。しかしパウロは、エルサレム教会からの推薦状も、あるいはユダヤ教との結びつきを強調することも必要ないと考えていました。このことが、今日の聖書箇所の背景にあります。
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