危機の時
第一コリント7章25~40節

1.導入

みなさま、おはようございます。第一コリント7章からの、三度目の説教になりますが、今日の箇所はその中でも最も難しい箇所です。と、いきなり皆さんを身構えさせるようなことを言ってしまいましたが、できるだけわかりやすくお話ししたいと思います。では、いったい何が難しいのかといえば、こう考えていただきたいのです。今から百年後の人たちが、今の状況下で私たちのやりとりしている手紙を読んだとします。そこには、「今の緊急事態の下では」というようなことが書かれています。私たちは「緊急事態」といえば、何の説明もなくても、「ああ、コロナのことだな」とすぐにわかります。しかし、百年後の人たちは、きちんと歴史の勉強をしないと、私たちが何のことを言っているのかわからないでしょう。そうはいっても、現代は大変な情報社会なので、百年後の人たちも今の時代の状況については有り余るほどのデータや資料があり、簡単に調べられるでしょう。それに対し、私たちは二千年前の時代に架かれた手紙を読んでいます。その時代の状況を説明してくれる文書は断片的で、数も非常に少ないのです。ですから、パウロが26節で言っている「現在の危急のとき」というのはいったい何のことなのか、確実にどうだとは言えないのです。そういう歴史上の難しさがあります。

また、ここでパウロの書いているギリシャ語もなかなか難しく、日本のいくつかの聖書を比較すると、訳がかなり違っているケースがあります。私たちが使っている新改訳の第3版の訳が必ずしも正しいとも言えませんので、私も原文のギリシャ語を確認しつつ、いったいどの訳が妥当なのかを説明しながら話していきます。ですから、今日の箇所の訳については皆様に別途プリントで私の私訳をお渡ししましたが、そちらも参考にしながら話を聞いていただきたいと思います。

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結婚について
第一コリント7章1~16節

1.導入

みなさま、おはようございます。早いもので、第一コリントからの説教も11回目になります。今日の箇所から、パウロは新しい問題を取り扱います。7章の冒頭に、「あなたがたの手紙に書いてあったことについてですが」とありますが、パウロはここから、コリントの人たちがパウロに手紙を送って尋ねてきたいろいろな質問に対して答え始めます。これは逆に言えば、この第一コリントの1章から6章までにパウロが取り扱ってきた問題は、コリントの人々がパウロに尋ねてこなかった内容、むしろパウロに隠しておきたかった内容だ、ということになります。それはそうですね。自分たちが派閥を作って内部抗争を繰り返しているとか、教会員の中で、自分の義理の母親と性的関係を持ってしまった人がいるとか、はたまた売春宿に通っている教会員がいるとか、そんなことがパウロの耳に入れれば、パウロが怒るに決まっています。ですから彼らはそれらをパウロの耳に入れたくなかったのです。またパウロは当時、アジアの大都市エペソにいましたから、パウロに手紙を送るとその内容がエペソの教会の人々にも伝わってしまい、自分たちコリント教会の恥が白日の下にさらされ、彼らからは軽蔑されてしまうだろうという不安を抱いたのです。ですから彼らはパウロに手紙を送ったとき、こうした内容には蓋をして、7章以降に書かれている、もう少しまともなというか、穏便な質問だけを書き送ったのです。

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