最後の士師サムエル
第一サムエル7章1~17節

1.序論

みなさま、おはようございます。今日はサムエル記の7章を読んでいただきましたが、サムエル記の1章から7章までは、ひとまとまりの物語だと言えます。それはサムエルを主人公とした物語です。8章以降は、イスラエルの初代の王となるサウルがストーリーの中心になりますが、それはそのままイスラエルが王制に移行していくという話でもあります。それに対してこの7章までは、イスラエルが「士師」と呼ばれるリーダーたちに率いられる最後の時代を過ごしているという、そういうことになります。

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一体何が起こっているのか?
第一サムエル6章1~21節

1.序論

みなさま、おはようございます。前回に続いて、今日も「主の箱」、「契約の箱」を巡るペリシテ人とイスラエル人との間の一連の騒動について見て参ります。聖書テクストを詳しく見る前に、この契約の箱のはらむ問題について少し考えたいと思います。この契約の箱は、一歩間違えればイスラエルを偶像礼拝に導きかねない、そのような問題を抱えているという話をさせていただきます。

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おとぎ話としてではなく
第一サムエル5章1~12節

1.序論

みなさま、おはようございます。サムエル記からの説教も、今回で五回目となります。さて、今日の箇所ですが、お読みになられてどのようにお感じになったでしょうか?なんだか本当の話とは思えない、おとぎ話かファンタジー小説のように思われたかもしれません。もちろんこれは聖書のテクストですから、そんな失礼なことは考えたこともない、思いもよらないことだ、とお考えになる方もおられるでしょう。しかし、クリスチャンでない方が今日の箇所を読んでどう思うかと考えると、「これは聖書の話というよりも、おとぎ話の類いではないのですか?」という反応が返ってくるのを容易に想像できます。

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テサロニケの教会
第一テサロニケ1章1~10節

1.序論

みなさま、おはようございます。先月までは、毎週マルコ福音書を学び、月に一度だけ旧約聖書から説教をさせていただきましたが、今は毎週の説教が旧約聖書のサムエル記からなので、今度は逆に毎月一度は新約聖書から説教をさせていただきます。これから数カ月間は、パウロのテサロニケ教会への手紙からメッセージさせていただきます。

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奪われた契約の箱
第一サムエル4章1~22節

1.序論

みなさま、おはようございます。サムエル記からの説教は、今日で四回目になります。これまでは、ハンナ、サムエル、エリとその息子たちというように、個人の信仰の在り方に注目してきましたが、今日の箇所からは個人の問題を越えたイスラエル民族全体の命運、政治的な話にテーマが移っていきます。しかし、それは個人の命運とは無関係にではありません。前回の箇所では、イスラエルの霊的指導者であるはずのエリの息子たちが道を踏み外し、それに対して神はサムエルを通じて裁きを宣告するという場面を学びました。しかし、その裁きはエリとその息子たちだけでなく、イスラエル全体に及びます。指導者の罪が、彼らの率いる群れ全体、民族全体に悪影響を及ぼすということです。リーダーの責任の重大さを改めて思わされる箇所です。

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サムエルの召し
第一サムエル3章1~21節

1.序論

みなさま、おはようございます。サムエル記からの説教は今回で3回目になります。そして、今回から初めてサムエル記の主人公の一人であるサムエルが本格的に登場します。今日はそのサムエルの預言者としての召命物語になります。私たちは以前、預言者エレミヤの召命物語を学びました。エレミヤは祭司の家系に生まれた人で、祭司には30歳になった成人男性がなるのですが、エレミヤは弱冠20歳で預言者としての召しを受けます。祭司として働く年齢より10歳も若いわけで、エレミヤはこの時「自分は若過ぎます」といって神の召しを拒もうとします。しかし、今日のサムエルはもっともっと若いです。幼いといってもよいかもしれません。この時点でサムエルは何歳だったのか、はっきりとは分かりません。サムエルは既に祭司エリの下で祭司見習いとして働いていましたが、ユダヤ人の元服は13歳ですので、おそらくサムエルも13歳になるかならないかという年齢であったと思われます。日本でいえば、中学1年生ぐらいの歳です。古代のイスラエルは、現代の日本よりも大人になる年齢はずっと低かったわけですが、それにしても13歳ではまだ世の中のことはよく分かっていなかったでしょう。

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祭司エリの息子たち
第一サムエル2章1~36節

1.序論

みなさま、おはようございます。私たちはサムエル記を学び始めましたが、今回が二回目になります。サムエル記の始まりは、一人の女性の祈りでした。彼女は子どもを授かることができない不妊の女性で、そのために大変惨めな境遇にいました。その女性すなわちハンナの、子どもを授けて欲しいという必死な願いに応えて、神がハンナに男の子を与えてくださったという、そういう話でした。

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教会の最初のメッセージ(山崎ランサム 和彦師)
使徒の働き2章36節

おはようございます。本日このようにして、中原教会の皆様と共に主を礼拝できる機会を与えられましたことを感謝いたします。山口先生は個人的にたいへん親しい友人であるとともに、尊敬する聖書学者でもあります。私も先生と同じく新約聖書を専門に研究している者でありますが、先生からはいつもたくさんのことを学ばせていただいています。その山口先生から中原教会での説教奉仕をというご依頼を受けましたので、喜んでお引き受けしたのですが、同時に緊張もしております。けれども今朝はご一緒に、聖書のみことばを通して主が語られる内容に耳を傾けていきたいと願います。

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ハンナの祈り
第一サムエル1章1~28節

1.序論

みなさま、おはようございます。先週まで私たちは、一年以上かけてマルコ福音書を学んで参りました。イエス・キリストの生涯を描く四つの福音書は、いうまでもなく教会にとって最も大切な文書です。しかし、聖書には他にもたくさんの重要な文書があります。そして、そのうちの一つが旧約聖書に収められた「サムエル記」です。サムエル記は、ある意味ではダビデの伝記と呼べるかもしれません。ダビデは16章まで登場しませんが、しかしその後は間違いなくサムエル記の主人公として常に活躍します。ダビデは、モーセやアブラハムと並んで旧約聖書で最も有名な人物の一人です。その彼を歩みを描いているという意味で、サムエル記はとても重要な文書です。

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弟子たちに告げなさい
マルコ福音書15章40~16章8節

1.序論

みなさま、おはようございます。私たちはマルコ福音書を昨年の5月1日から、今日を含めると43回にわたって読んで参りました。まるまる1年がかりで取り組んできたわけですが、今日はいよいよ最終回になります。ただし、マルコのエンディングは実は大きな問題をはらんでいます。といいますのも、みなさんもお気づきのように、16章9節以降は鍵かっこで括られていますよね。なぜそうなっているかといえば、16章9節以降はほぼ間違いなくマルコ福音書の原本、つまりマルコがこの福音書を書いたときには含まれていなかったからです。私たちの用いている新約聖書の文書には、一つとして原本が残されたものはありません。原本を人間の手で一文字ずつ転記した写本と呼ばれるものがあるのみですが、マルコ福音書の最も古い写本には9節以降は含まれていません。専門家の間では、マルコのオリジナルのテクストは8節で終わっているというのが定説になっています。では9節以降の文章は何なのかといえば、8節で終わるとそれはあまりにも唐突だということで、後の時代にマルコではない誰かが書き加えたのが9節以降だとされています。いきなりこういう話をされるとびっくりするかもしれませんが、新約聖書は印刷技術などない時代に書かれたものなので、こういうことがしばしばおこるのです。

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マルコ福音書15章40~16章8節” の
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